幸せすぎて、くだらない。

私の、生きる教祖様。

太秦行進曲を見てみた。

  ひさしぶりに映画を借りようと思い、某レンタルショップに行ってみた。『渇き。』が見てみたくて(小松菜奈ちゃんに森川葵ちゃんだなんて私得すぎる映画だ)か行を見漁っていたら、たまたま見つけた。『関西ジャニーズJr.の京都太秦行進曲』。手に取ってみると、なんとジャニーズWESTデビュー前。これは見らねばならぬと思い、即借りた。

 

   正直、脚本やストーリーには期待していなかった。ジャニオタ脳が先行しすぎて、好きな人が出ていればそれで良いという思考だからだろうか。とりあえず彼らの若かりし姿が見られればと思っていた。そんな変な期待は、良い意味でも悪い意味でも裏切られなかった。役所もごくごく小さなアクション教室に通い、いつかアクション俳優として売れてやる!と意気込む若者たち(重岡大毅桐山照史中間淳太浜中文一小瀧望向井康二藤井流星)だ。関西ジャニーズJr.初の冠映画。彼らがこの映画に熱意を持たないわけがない。私は映画撮影・公開当時の彼らを知らないが、彼らの当時の状況と役所はリンクするものがあるだろう。若さ故の熱意というものは、時として恥ずかしさを感じさせたり、目も当たられなかったりする。良い意味で、とても人間臭い映画である。重岡くん若いし、えくぼ健在だし、流星くんから滲み出るチャラ男感、その姿だけでも見られたらいいかと思っていたら、やはりジャニーズ、ひいてはJr.映画。それだけじゃ終わらない。脚本は誰だ!彼らにこんなこと言わせたのは誰だ!そう言わずにはいられなかった*1

 

 

   場面その1。彼らは、斬られ役ではあるがせっかく舞い込んできた時代劇のお仕事で上手く立ち回りをすることができず、先輩役者に散々に言われ、頭にきた三村(重岡くん)は危うく一触即発の事態に陥る。しょげる彼らを見かねた…あれは出演者なのか?が、彼らを誰ひとりいない小さな映画館に連れて行く。そこで、何が見える?と問う。「先輩役者は彼らの若さに嫉妬しているのだ。君たちは若いから夢がいくらでも持てる。これからじゃないか。」ざっとそんな話。彼らの役に年齢設定はおそらく設けられていないが、本編冒頭での三村(重岡くん)は、仕事は週に2日ほど地域のヒーローショー(主役ではなく敵役)のみ。いい加減働きなさい家のローンもあるんだから、と母親から窘められている。つまり、世間一般的にはフリーターと言われる部類だ。家族からの発言に上手く言い返せない彼が、可能性はまだまだあるんだと先輩役者(いい年のおじいちゃん)に激励される。

 

   場面その2。その後、彼らの所属するアクション教室にまた映画の出演依頼がやってくる。7人いるなか、出演が決まったのは6人。大志(文一くん)は選ばれなかった。その判断をくだした先生たちに抗議する6人。しかし先生たちは、お遊びじゃないきちんとできる人間をあちら側に送るのが筋だ今回はこの6人でいく(超大意)と伝える。大志は応援してると言うが戸惑いと悔しさが隠しきれない。撮影現場でまた6人は壁にぶつかるのだが、大志の言葉で6人はまた前を向き、撮影に臨む。

 

  この2つが、特に記憶に残った場面だ。理由なんて明言せずとて伝わるだろう。彼らは、どんな気持ちでこのシーンを演じたのだろうか。本作の公開は2013年3月30日。7人のうち最も学年が上である文一くん淳太くんは当時26歳、真ん中あたりに位置する向井くんも大学進学の年であり、周りは新たな道へ進んだり、社会人としてそこそこのキャリアを得る頃だ。そんななか、芸能界という華やかなではあるが、将来が一切見えない世界に生きる彼ら。ましてやJr.。あまりに自分と似すぎた設定だ。また、仲良しこよしではいかない物事との対面。いま本作を見たら、ジャニーズWESTのデビュー経緯を思い出さずにはいられない。私はデビュー発表の衝撃葛藤混乱等をリアルタイムでは知らないのだが、憶測からでも何とも言えない気持ちになる。本作では仕方ないと割り切り前を向く6人。だが、現実世界でそのうちの5人は、1年と経たずに似たような状況に直面する。しかし、彼らは諦めなかった。諦めなかったことが正解か不正解か、それは誰にも分からないことだが、これが良かった正しいのだと納得させられるかは、あの7人の努力次第だ。

 

   もちろん、本作はあくまで映画、脚本ありきのフィクションだ。ホームページ等を見る限り、原作は見当たらない。つまり、彼らのためにつくられた映画だといえる。彼らが前へ前へと進んでいく姿で終わるのだが、おそらくまたあの教室で先の見えない生活を送るのだ。ああ、まるでJr.ではないか。事実Jr.なのだが。もちろん、三村と重岡大毅は別人なのだから、あまりに重ねすぎるのは失礼にあたるのだが、出演者やストーリーからして彷彿とさせてしまうのは仕方ないことだ。メインの7人のうち、1人は舞台等々で活躍し、5人は念願のデビューを果たしているから笑って見られるのかもしれない。

 

   最後は、突然歌が始まる。オリジナルソング“NOT FINALE”。何が面白いって、京都太秦と銘打っているから、主に和装姿、舞台は京都。バリバリの日本映画なのだが、バックにリチャがいる。いやぁリチャは目立つ背景が和だから余計に目立つさすがだ。後半は、7人も着物を脱ぎ捨て、よく見るキラキラとした衣装で歌い踊るのだが、いやぁ興味深い。センターは重岡大毅なのだ。引き算すればセンターは彼が適任だが、そんな残り物仕事ではなく、きっと彼はセンターになるべくしてなったのだと思う。実際、彼の所属するグループ、ジャニーズWESTでも重岡大毅はセンターだ。ああ、興味深い。ザ・アイドルな風貌ではないものの、アイドルであることを誰よりも諦めなかった誰よりも強く思った彼のセンター論は、きっととても深いものになるだろう。

 

   若かりし彼らを拝むために借りた『京都太秦行進曲』。想像以上に大きなものを得る映画だった。

 

 

*1:脚本は、本木克英さん。『釣りバカ日誌』『犬と私の10の約束』『鴨川ホルモー』『超高速!参覲交代』などに携わっている方